DX時代の雇用と法律問題(1)
Q:メタバース、VRと私達の雇用環境への影響は?
今年に入り、メタバース(仮想空間)とかVR(仮想現実)などという言葉が急速に広がっています。メタバースという社会経済がいよいよ当たり前になってきそうです。私達の雇用環境には、どのような影響があるのでしょうか?
A:採用活動をはじめ、さまざまな利用に広がっています。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の到来が叫ばれています。特にその中でもメタバースが、私達の生活により大きな影響を与えるものとして活用されているのは、実はビジネスや、労働の世界との関わりです。メタバースはインターネット上で自由にさまざまな商品やサービスを生み出すものであり、既にビジネスとして「ビル」や「土地」、更には「お金」を作り、取引が可能とされています。まず、コロナ禍によってリモートワークが広がる中で、企業は仮想空間で働くことのできる「メタバースオフィス」を作り、採用活動などさまざまな利用に広がっています。
メタバース、VRとは
メタバースは、インターネットに構築された現実とは異なる3次元の「仮想空間」のことで、「メタ」(meta,「超越」又は「高次」)と「バース」(universe,「宇宙」)を組み合わせた造語です。メタバースの仮想空間は、コンピューターグラフィックス(CG)で制作され、CGを制作する「技術」のことを一般にVR(ヴァーチャル・リアリティ)と呼んでいます。
メタバースはVRの技術を使って生み出された仮想「空間」であり、メタバースとVRは「仮想空間」のいわばソフト(空間)とハード(技術)の関係にあるのです。
アバター(avater)とは
アバター(avater)は、「分身」を意味し、利用者が仮想空間の中で専用ゴーグルなどのVR機器を用いて、アバターを駆使してゲームをしたり、登場する動物の住民と遊んだり、SNSで他のユーザーとコミュニケーションを行ったりする際に利用するキャラクターであり、これによってまるでユーザー自身が仮想空間の中にいる感覚になるのです。
メタバース利用の広がり
メタバースは、コロナ禍の中で、対面でのコミュニケーションが難しくなっていたことから、ゲームやSNSのみならずショッピング(店舗)などにも広がり(例えばオンラインを通して遠くにいる友人や家族と一緒にバーチャル店舗で買い物を楽しむ)、更には近年はオンライン会議、社員研修、トレーニング等でも活用されるようになってきています。昨年10月にアメリカのIT企業フェイスブック社が、社名を「メタmeta」に変更したのは、このようなトレンドの象徴的出来事といえます。
メタバースが私達の生活に、より大きな影響を与えるものとして活用されているのは、実はビジネスや、労働の世界との関わりです。メタバースはインターネット上で自由にさまざまな商品やサービスを生み出すものであり、ビジネスについてみると「ビル」や「土地」、更には「お金」を作ることされ可能とされます。既にそのようなビジネスが登場しており、日本でも例えば仮想空間の上に、見学可能な「メタバース住宅展示場」やショッピングモール、広告掲示板などが登場しています(これらの「商品」は、誰でもインターネットで検索できます)。
メタバース世界
メタバース世界は、私達の想像を超えるスピードで広がっているにもかかわらず(5年後の2028年にはメタバース市場は約100兆円、20年の2倍になると予想されています。2022年5月25日付日経新聞)、私達の生活とりわけ働く者にとってどのような影響が出てくるのかの議論はこれからなのです(2021年7月経産省は、企業がメタバースに参入する際の法的リスクについて報告書を作成していますが、具体的解決等は示されていませんし、労働者に関わりのある厚労省は検討すらしていません)。今回は、メタバースの基本知識について述べましたので、次回、メタバースと私達働く者との関連について述べることにしましょう。(続く)