ホーム > パートタイマー > パートタイマーの副業は可能でしょうか

見出しパートタイマーの副業は可能でしょうか

Q:パートタイマーの副業は可能でしょうか

Aさんは共働きで、B社でパートタイマーとして働いていますが、最近夫がリストラされて生活が苦しくなったので、勤務終了後にC社で働くことにしましたが、会社には届出をしていませんが、何か不都合なことがあるでしょうか?

A:兼業は原則として、会社の承認が必要です

パートタイム労働者が兼業する場合には、原則として会社の了承が必要とされますので、会社の了承をとっておくことをおすすめします。ちなみに時間外労働の場合、割増賃金の支払いは原則として後者の会社が負担すべきこととなります。

兼業(職)禁止

兼業(職)とは、ある企業に在籍したまま別の企業で就業したり自ら事業を営むことをいい、多くの企業では就業規則で、労働者の兼職を禁止したり、使用者の許可にかからしめています(ちなみに公務員の場合には、職務の中立性や職務専念義務、私企業との癒着防止の配慮等から、兼業・兼職が原則として禁止されています。国公法96条~104条、地公法35条~38条)。しかしながら労働者は、雇用契約において使用者に対し1日のうち一定のかぎられた時間、労務提供の義務を負担し、その義務の履行過程においてのみ使用者の支配に服するものであり、就業時間外は身分的人格権に使用者の一般的な支配に服するものではありません。したがって労働者は、勤務時間以外の時間を、事業場の外で自由に利用することができ、他の会社に勤務するためにその時間を利用することも、特段の事情がないかぎり原則として許されなければならないことになります。
このように兼職制限は、労働契約の本質、働く側の事情、憲法が保障している職業選択の自由から、合理的な理由がある例外的な場合に限定すべきものとされ、裁判例もこのような理由から、「①使用者の企業機密の保持を全うし得なくなるなど経営秩序を乱したり、②労働者の使用者に対する労務の提供が不能若しくは不完全になるような場合」に例外的に許されるものとされているのです(瀬里奈事件・東京地判昭49.11.7判時765号107頁など)。
近時、ワークシェアリングや個人の能力の向上あるいは不況や労働時間短縮に伴う収入補填もしくはプライバシー保護等の観点から、企業において従業員の兼業を積極的に認めていこうとする傾向があり、兼業規制の範囲はより制限されたものとなっていく可能性があると思われます。設問ではパートタイマーの兼職は、勤務時間外の行為であり、上記瀬里奈事件の①の場合に該当しないことは明らかですが、睡眠不足による居眠りや、遅刻、注意力が散漫になり利用者から苦情が寄せられるなど労務の提供に現実に支障を来す場合などは、②に該当する可能性がでてくることになり、懲戒処分などの対象となることもあり得ますので、十分配慮が必要でしょう。

兼業の時間管理

労基法では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の運用については通算する。」と定めており(38条)、「事業場を異にする」とは、甲事業場で労働した後に乙事業場で労働することを意味しますが、この場合、同一事業主のみならず事業主を異にする事業場において労働する場合も含まれるとされています(昭23.5.14基発第69号)。
したがって本問でAさんが、B社で5時間パートをして、C社で4時間働いた場合、1日8時間以上働くことになり、使用者には労基法上の36協定の締結届出をしたうえで、残業代支払いの義務があることになります(32条、36条、37条)。ではこの場合B社とC社のどちらに、36協定の締結や割増賃金の支払義務があるのでしょうか。この点について行政解釈では、原則として後者に時間外労働締結義務と割増賃金支払いを義務付けつつ、これらを怠った場合の責任発生事由として、他の事業所での就業の事実の認識を必要としています。