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見出しクラウドワーカー

Q:「ウーバー」の仕事とはどのような仕組みなのでしょうか?

コロナウィルスの影響でアルバイト先が休業になり、月収が減ってしまいました。そこで空いた時間で配達の仕事をしようかと悩んでいます。最近「Uber eats」のリュックを背負って配達の仕事をしている人を見かけますが、「ウーバー」の仕事とはどのような仕組みなのでしょうか?

A:「ウーバー」を介し配達を請負う仕事のことです。

いわゆるクラウドソーシングの一種で、プラットフォーム事業者(ウーバー)が、スマホアプリを用いて利用者と配達人を結びつける配達サービスであり、利用の手軽さもあって世界中で急速に普及しているものの、利用者の安全管理や配達人の労働条件などをめぐってさまざまな問題を引き起こしています。

「ウーバー(Uber)」「「ウーバーイーツ(Uber eats)」とは

「ウーバー」とは、スマートフォンのアプリで、「素人」運転手と乗客を結びつける(マッチングシステム)、いわゆる「ライドシェア」と呼ばれる配車サービスを、世界中に展開したアメリカの会社です。このような配車サービスは、今日クラウドソーシングと呼び、ICT、クラウドサービス等を利用して、フリーランサーなど不特定多数の人々に業務委託をする、いわゆるオンラインプラットフォームビジネスの一種と言えます。

そこで、ウーバーの「ライドシェア」のマッチングシステム(アプリ)を、料理の配達に置き換えたのが「ウーバーイーツ」になります。ここでは配達する人を「配達パートナー」と呼び、「配達パートナー」と料理の注文者(若しくは登録している飲食店)を結びつけるフードデリバリーサービスは、現在世界中で急速に普及しており、アメリカのウーバーUber社が大きく展開しています。

今日、コロナウィルスの蔓延防止のための緊急事態宣言により、「持ち帰りサービス」「フードデリバリー」の需要が高まっており、「手軽」に「安い手数料」で料理を注文できると言われています。

 

「ウーバーイーツ」の特徴

ウーバーに代表されるフードデリバリーの特徴は何と言ってもその手軽さにあると言えるでしょう。利用者はスマホで簡単に料理を注文し、しかも安い手数料で利用でき、他方「配達パートナー」は、自分の空いている時間と自転車(車輌)を配達サービスに充てることによって収入を得ることができ、いわば気軽な副業としての魅力があります。このようなフードデリバリーは、個人の労働力と料理を注文したい人(若しくは飲食店)とをいわば結びつけることにより、新たな市場を生み出しているとして、今やギクエコノミーの代表的存在となっているのです。

また、ここでの「配達パートナー」は雇用されているわけではなく、いわゆるフリーランス(自営業者・クラウドワーカー)として行い、完全出来高制でお金が支払われることになります。配達が完了すると、プラットフォーム事業者(Uber)から数百円の報酬が支払われ、金額は配達距離等によって異なります(支払い=基本料金×ブースト率+インセンティブ料金-サービス手数料)。

たとえば東京や大阪の場合、1時間当たり2~4件配達して、その他の追加報酬が付くと時給1,200~1,600円程度と言われ、1日中配達をすれば日給1万円を簡単に超えることも可能としていますが、配達することで報酬を得るこのシステムの問題点は、いったい何なのか、以下に検討していきます。

 

「配達パートナー」の問題点

「配達パートナー」の問題点は、利用者に対する安全管理責任と、配達人に対する雇用責任の2点に帰着します。

① 事業者の利用者に対するさまざまな安全管理上(料理がこぼれている、異物混入、配達遅延)の問題について、ウーバーなどは、利用者が「配達パートナー」を直接評価するいわゆる「レイティングシステム」により、評価の低い配達人は淘汰されるので、安全は確保されると反論しています。

しかしながらこのような評価システムは、事後的なもので、事件・事故発生を未然に防止する安全管理とは、根本的に違うものであり、仮に配達人に依頼する場合、事業者責任に関して事前チェックとしての安全管理責任と、事後チェックとしての事故責任に関する法的システムを整備することが不可欠と言えます。

② 事業者の「雇用」責任 ・・・ 「配達パートナー」は、自分の空いている時間と自転車(車)を使って自由にフードデリバリーサービスを行うことができ、事業者との関係は請負契約であり、個人事業主とされていることから、労働者ではないものと理解されてきました。

したがって各国でも、配達人に対しては労働諸法規等の適用がなく、配達人は最低賃金、年休制度、割増賃金や労災保険、失業保険の受給対象とならず、自転車の整備費(又は車輌費、燃料費、駐車代、保険料等)全ての経費は全て個人負担とされています。

しかしながら配達人の実態をみると、まず仲介手数料は、事業者(ウーバーなど)の一方的決定によることとされています(「ブースト」「クエスト」というインセンティブ)。配達人は個人事業者でありながら、配達料を決めることができず、事業者が一方的に配達料と歩合額を決定しており、しばしば配達料の引下げや仲介手数料割合の引上げが、事業者によって一方的に突然なされることになります。

しかもドライバーは、利用者からのデリバリーリクエストに対し、すぐに応じなければ配達拒否とみなされ、配達拒否率が一定より下回わったり、キャンセル率がある程度超えると、配達の依頼が減少し、最終的にはアプリの利用停止、即ち解雇となるのです。

要するに配達人には、仕事の依頼を断る自由がなく、しかも配達承認をしても、長距離になれば、時給に換算して大きく下回る可能性を予想しなければならないことになります。

 

「弁当とケガは自分持ち」

以上の通り、「ウーバー」の仕事にはさまざまな問題が含まれており、仕事をするうえで、個人で対策を取らなければならないことが多くあると言えます。

このさまざまな問題のあるシステムは、実は、日本の歴史でいう江戸時代の「口入れ屋」と同じことと言えるでしょう。

「ウーバー」の説明に、「プラットフォーム事業者」「クラウドワーカー」「インセンティブ(ブースト)(クエスト)」「サービス手数料」等、いろいろな言い方をしていますが、実のところ職業紹介の「口入れ屋」「人手が足りない時の日雇労働者」「日雇賃金」「口入料、口銭、世話料」と言い換えることができるのです。それは正に当時、一日中働く人々が、その日の食事は自分で用意し(自転車・車輌・それらの整備費用も)、ケガをした場合の医者代も自分で支払い、その後の補償もない働き方なのです。つまり「弁当とケガは自分持ち」となるでしょう。

今日のICTを利用して表現を変えた「自由に職を求め、あるいは自由に人を求めることが出来れば、それをあっ旋する者が現われる」状態には、今後法的規制がさらに必要と言えるでしょう。

 

(参照)「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」水谷英夫