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見出し経営状態が思わしくないので来月末で解雇する

Q:経営状態が思わしくないので来月末で解雇する

Aさんを含め社員数人が、「経営状態が思わしくないので来月末で解雇する」と会社側から通告を受けました。人件費を削減しないと倒産を免れないから仕方がないと会社は言うのですが、このまま言いなりになるしかないのでしょうか。

A:使用者に説明を求めましょう

整理解雇は、いわゆる4要件(素)を満たしていない場合は、合理的な理由がないとされており、4要件を満たしているかどうか確認し、納得できない点があれば、使用者に説明を求めましょう。使用者との話し合いには、整理解雇を通告された人たちや労働組合あるいは従業員全員が団結して臨みましょう。

解雇制限

解雇は使用者からする、労働者の意思に反する労働契約の解消であり、労働者に経済的、人格的に大きな負担を強いるものであることから、いずれの国でも、大幅に制限されるべきものとされてきており、わが国でも、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」とされています(労契法16条)。

整理解雇4要件(素)

ところで使用者側の事情による解雇の典型である、経営上の理由による解雇(いわゆる整理解雇)の最大の特徴は、その理由が労働者側にはなくもっぱら使用者側にあることであり、経営上の困難に陥った企業において、一定数の労働者の削減が最終的に避けられないとしても、責任のない労働者に犠牲を強いるのは可能なかぎり避けるべきことが法の要請とされ、判例は、そうした発想に基づいて、整理解雇の有効性について、①人員整理の必要性があること②解雇回避努力が尽くされたこと③人選基準とその適用が合理的であること④労働組合もしくは被解雇者と十分協議したことという、いわゆる「整理解雇4要件(要素)」と呼ばれる独自の判断枠組みを形成してきています。

①人員整理の必要性があること

①の人員削減の必要性では、人員削減措置(これを内容とする企業の縮小、整備、合理化計画)の実施が、不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないしはやむを得ない措置と認められることが求められることになります。

解雇回避努力が尽くされたこと

②の解雇回避義務では、使用者は、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集など、ほかの手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(「解雇回避努力義務」)を負うことが求められることになります。

③人選基準とその適用が合理的であること

③の被解雇者選定の妥当性では、たとえ何名かの労働者の整理解雇がやむなしと認められる場合にも、使用者は被解雇者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して行うことを要し、したがって基準を全く設定しないでなされた整理解雇や、客観的で合理的ではない基準による整理解雇は無効とされることになります。

④労働組合もしくは被解雇者と十分協議したこと

④の手続の妥当性では、使用者は労働組合または労働者に対して整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うとしています。

まとめ

整理解雇も解雇の一種であり、その合理性を基礎付ける事実については使用者側が証明責任を負うべきことから、上記①~③については使用者が主張立証責任を負い、④については、手続の不備について労働者が主張立証責任を負うとされています。