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見出しDX時代の雇用と法律問題(2)

Q:メタバース、VRと私達の雇用環境への影響は

今年に入り、メタバース(仮想空間)とかVR(仮想現実)などという言葉が急速に広がっています。メタバースという社会経済がいよいよ当たり前になってきそうです。私達の雇用環境には、どのような影響があるのでしょうか?

A:採用活動をはじめ、さまざまな利用に広がっています

DX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の到来が叫ばれています。特にその中でもメタバースが、私達の生活により大きな影響を与えるものとして活用されているのは、実はビジネスや、労働の世界との関わりです。メタバースはインターネット上で自由にさまざまな商品やサービスを生み出すものであり、既にビジネスとして「ビル」や「土地」、更には「お金」を作り、取引が可能とされています。まず、コロナ禍によってリモートワークが広がる中で、企業は仮想空間で働くことのできる「メタバースオフィス」を作り、採用活動などさまざまな利用に広がっています。

メタバースでの「就活」

メタバースオフィスは、バーチャルオフィスとも呼ばれ、従業員同士が仮想空間上でコミュニケーションをとるためのもので、既に複数の企業で顧客との交渉や従業員同士での意見交換や採用などにも活用されるようになってきています。

採用活動の具体例は、バーチャル空間を活用して、オンラインで求職者を対象に、会社見学から入社後の研修などさまざまな活動を包括的に行うことができるようにするもので、企業は自社内にメタバースを構築し、二次元の閲覧用コンテンツを用いて、スライドや動画などで、空間内での会社説明会や採用イベントなどをライブ型で開催し、それに対して求職者はメタバースに入場して、アバターとして空間内を自由に動き回りながら、随所に置かれた社員の顔写真入りのアバターに近づくと、事前に録音した社員の雑談が聞こえる仕掛けになっており、会社情報を閲覧できるようにするのです。しかもこのようなメタバースオフィスは二次元であることから、利用者はVRゴーグルなどの機器を用いることなくコンテンツにアクセスでき、空間内でアバター同士で会話をすることができるライブ型イベントに参加した場合には、企業の担当者とも気軽に話をすることができるというものです。既に2023年入社予定の学生らを対象とした内定式の会場に内定者がアバター(分身)で参加する方式で開く企業もあらわれています。

 

メタバース「就活」の問題点

もっとも企業がこのように「就活」に際してメタバースを活用したプログラムを用意しても、求職側はほとんど利用していないのが現状であり、その理由として「メタバースが何かわからない」「Zoomなどでオンライン就活ができている」「使いづらい」等指摘されています。確かにテレワークの導入が進み、Web上での会議や打ち合わせが浸透しつつあるだけに、一足飛びのメタバース空間での就職活動には、二の足を踏む傾向があるものの、数年後にはどのように変化していくのか注目しておきたいものです。

ところで、今年もまた人手不足から売り手市場となっている就職戦線も既に終盤を迎えているようですが、他方では、労働条件の提示抜きに一方的に求職者に採用内定を通知したまま放置したり、内定式に出席してみたところ、当初示された求人票と異なり「業務委託契約」となっている等の「ブラック企業」が横行しており(ブラック企業の「特徴」は「大量採用大量退職」(=解雇)です!)、このような場合は直ちに監督署や弁護士等に相談し、社会人としての入り口でのつまづきは回避しましょう。