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見出し結婚退職制は許されるのでしょうか

Q:結婚退職制は許されるのでしょうか

Aさんは結婚することになりました。これまで、Aさんの会社では女性社員は結婚したら退職することが慣例となっていましたが、働き続けたいと思い会社に申し出たところ、遠くの支店に転勤することを条件にされましたが、その支店に通勤することは通勤不便なためとても無理です。退職せざるを得ないのでしょうか。

A:結婚退職制は、男女雇用機会均等法違反です

均等法6条は、労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)等について、性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけない旨を定めており、もちろん結婚を理由として、女性にのみ退職を強要したり、不利益な配置転換をすることは禁止されています。このような故意は性差別に該当しますので、会社に対して不利益な配置転換を行わないよう強く抗議しましょう。

均等待遇の原則

憲法14条は、法の下における平等の原則を掲げ、労使関係においてこれを実現するため、労基法は「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」(3条)と規定し、さらに「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」(4条)と定めています。しかし、労基法3条の差別的取扱いの禁止には、性別という文言を欠き、また同法4条は、男女同一価値労働・同一賃金の原則に基づき、女性であることを理由とする賃金の差別的取扱いを禁止しているものの、男女の賃金以外の差別的取扱いについて触れていないため、性別を理由とした昇進・昇給・解雇などの差別的取扱いは、いわば「法の谷間」とされたことから、多くの争いが生じることになり、判例法理において、解雇や退職などをめぐる合理的な理由のない差別的取扱いはいずれも公序良俗に反して無効とされるようになりました。
そこで判例や均等特遇の原則の趣旨を明確にするため、1985年(昭和60年)に均等法が制定され、同法は2度の改正を経て現在では、事業主に対して、募集・採用から解雇に至る雇用の全ステージでの差別や間接差別、妊娠・出産等を理由とする差別を禁止すると共に、セクハラ防止措置やポジティブ・アクションの推進などが規定されています。
こうして現在、わが国の性差別禁止法制は、女性への賃金差別を罰則付きで禁止する労基法4条と、募集・採用から解雇・退職に至る賃金以外の男女差別を一般的に禁止し、違反に対して調停などを予定する均等法という2つの柱から成り立っていますが、これらは相互に排他的ではないので、たとえば職務配置上の差別や昇進・昇格上の差別が賃金差別をもたらす場合には、均等法違反と同時に労基法4条違反が問題とされることになるのです。

差別取扱いの禁止

均等法6条は、労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練、福利厚生、労働者の職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新等について、性別を理由として差別的取扱いをしてはならないと規定し、これを受けた行政指針はその具体的な例を指示しています(「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平18.10.11厚労告614号。注3)。
本問で使用者の提示した条件はこのような規定に明白に違反するもので、厳しく指摘して是正させましょう。