ホーム > 派遣労働 > 派遣労働とはどういうものなのでしょうか

見出し派遣労働とはどういうものなのでしょうか

Q:派遣労働とはどういうものなのでしょうか

求人雑誌で「派遣」という言葉を目にしますが、派遣と普通の正社員では、どこが違うのでしょうか。また、人材登録している会社と、実際に働く先と、どちらと労働契約を結んでいることになるのでしょうか。

A:雇用関係と指揮命令関係が分離し、責任の所在があいまいな雇用形態です

派遣労働では、労働者は労働契約を結んでいる会社(派遣元)と、指揮命令を受けて実際に働く会社(派遣先)とが異なり、賃金は、派遣元事業主から労働者に支払われます。このように、派遣労働は、雇用関係と指揮命令関係が分離している点において、一般的な雇用形態とは異なっており、そのため、派遣元事業主と派遣先との間で責任の所在をあいまいにされトラブルが発生したり、労働条件や就業環境の面で不利益な取扱いを受けるケースも多くなっており、派遣法改正(2012年10月1日施行)により改善されることが望まれます。

派遣労働

派遣労働とは、派遣元企業が自己の雇用する労働者を、派遣先企業の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることをいい、その特徴は、指揮命令者である派遣先(ユーザー)と派遣労働者(スタッフ)の間に労働契約が存在しないことにあるのです(図表、派遣法2条1号)。派遣労働を対象とした事業には、次の通り「登録型」と「常用型」の2つのタイプがあります。

keiyakuhouhou

(1)「常用型」派遣事業

「常用型」は、「特定労働者派遣事業」と呼ばれ(派遣法2条5号)、派遣元が「常時雇用される労働者のみ」を派遣先に派遣する事業のことであり、この場合、派遣元事業主と派遣労働者が常に雇用契約を結んでいる状況にあり、派遣されている期間中も、派遣元事業主の従業員としての地位は継続しています。「常用型」は登録型に比べて問題が少ないとされて、派遣事業主が欠格事由に該当しない限り、届出のみでよいとされています。

(2)「登録型」派遣事業

「登録型」は、「一般労働者派遣事業」と呼ばれ(2条4号)、派遣元が登録された労働者を派遣先に派遣し、その都度、派遣期間と同じ期間の労働契約を労働者と締結する派遣事業をいい、派遣労働者は、派遣元事業主に自分の名前や可能な業務などを登録しておき、仕事が生じたときにその期間だけ、派遣元事業主と雇用契約を結んで派遣先で働くものです。したがって派遣期間が終われば派遣元事業主との雇用契約も終了することになり、労働者の雇用を不安定化させ使用者責任を曖昧にすることから、厚労大臣の許可が必要とされていますが(同法16条、17条)、今日でも派遣の問題は「登録型」に集中してあらわれています。特に従来は、派遣期間が派遣元と派遣先とで自由に締結できたことから、1日単位(場合によっては時間単位)の、いわゆる日雇い・スポット派遣が頻繁に用いられて、ワーキング・プアの温床になるなど社会問題化したことから、派遣法改正により日雇・スポット派遣は原則禁止とされました。

対象業務

派遣の対象業務は、もともと禁止されていた労働者供給事業の中から、労働者派遣という形態を分離させ、例外的に認めるという趣旨からきわめて限定されていましたが、いわゆる規制緩和の流れの中で数次の改正が行われ、今日では港湾運送・建設・警備を除き原則として自由とされるようになり、従来禁止されていた物の製造の業務についても認められています(派遣法附則4項。もっとも派遣期間の上限は3年間とされていますが、製造業への派遣が大きな社会問題となった点は後述)。
また従来禁止されていた医療業務のうち、社会福祉施設における医療業務についても派遣が認められるようになり、さらに今日では派遣期間終了後に派遣先が労働者を直接雇用する、いわゆる「紹介予定派遣」も認められています(派遣法2条6号)。

派遣の労働条件

前述した通り派遣元事業主は、派遣先企業との間で派遣契約を締結し、派遣労働者は派遣先の事業場においてその指揮命令を受けて業務に従事するものであり、派遣が法の定める枠組みに従って行われる限り、派遣先企業と派遣労働者の間に労働契約関係が生じることはないとされているのです。
しかし、派遣労働者であっても、事業又は事務所に使用され、労働の対償として使用者から賃金の支払を受ける「労働者」であることに変わりありませんから(労基法9条)、労働諸法規は原則として、派遣労働者の使用者である派遣元に適用されることになります。もっとも実際には派遣先事業主が業務遂行上の具体的な指揮命令を行っていることから、派遣法上の特例により、派遣先も、設備・機械等の設置・管理、職場環境の保全の義務を負い、労基法、労安法、じん肺法、作業環境測定法、均等法等の就業条件の保護に関する規定の一部について、事業主としての責任を負うこととされています(派遣法44条~47条の2)。
さらに派遣法改正により、派遣先や派遣元に対し、いわゆるリストラ派遣や、中途解除の規制、無期雇用への転換推進、均衡処遇の確保、マージン率の公表、派遣料金の明示などが義務付けられるようになりました。