パワハラを受けた
Q:パワハラを受けた
上司と仕事のやり方をめぐって口論になってから、必要な書類が配られなかったり、ほかの社員の前で怒鳴られたり、同僚からの陰口や無視などが続いており、精神的に苦痛となっていますが、どうしたらよいでしょうか。
A:責任を追及できる
いじめやパワハラは、加害者本人の不法行為や使用者の責任を追及できるので、まずは、上司に対していじめ・パワハラをやめるよう要求し、それでもやまない場合は使用者に是正措置を要請する必要があります。
いじめ・パワハラ」とは
職場における「いじめ」は今日、セクハラと並んで深刻な問題となっており、このうち、特に上司などの部下に対する上下関係を利用とするものはパワー・ハラスメント(パワハラ)、大学などの教授から大学院生などに対するものはアカデミック・ハラスメント(アカハラ)などと呼ばれています。
職場において日常の勤務に耐えられないほどのいじめが続くと、精神的ストレスから「うつ病」を発症して、病気欠勤となり、最後には休職期間満了や復職の見込みなしと判断されて、自動退職、解雇を通告されることも多いのです。いじめ・パワハラは、このように人格権侵害としてセクハラと同様の性格をもち、また労働者の人格を軽視するという共通の企業風土から生じますが、「いじめ」に固有の特徴として、会社のリストラや、組合所属・信条を理由とする特定労働者の排除など、企業全体の方針として展開されることも少なくないことです。
いじめパワハラと職場環境配慮義務
「いじめ」「パワハラ」が行われた場合、当該行為を行った上司や同僚が不法行為責任(民法709条)を負うことは当然として、更に使用者が使用者責任や債務不履行責任(民法709条・415条)を負うことがあります。
使用者は、労働契約上の義務として、労働者にとって快適な就労ができるように職場環境を整える義務(職場環境配慮義務)を負っており、使用者は、このような職場環境配慮義務に基づき、労働者の快適な就労の妨げになるような障害(職場いじめ、職場八分、セクハラ、モラハラ、パワハラ等)を服務規律で禁止して、その発生を防止するとともに、これらの非違行為が発生した場合には、直ちに是正措置を講ずべき義務を負っており、これを放置ないしは黙認すれば、使用者責任や債務不履行責任を問われてもやむを得ないことになるのです。
上司の叱責といじめ
部下のミスに対する上司の叱責などは、今日、程度の差こそあれ大半の職場で行われていますが、このような叱責等により、部下の人格権を侵害してはならないことは当然のことです。しかし従来、部下への叱責等は業務遂行のうえで当然であるといった意識や、職務上の関係にすぎない上司と部下の関係が、人格面での上下関係とみなされがちであったわが国の企業風土などから、部下に対する叱責等がいじめやパワハラとなりうるという認識は、まだ十分に定着していないと思われます。例えば、部下を「鍛えるつもりで多少強い口調を用いていたこと」が「パワハラ」にあたると指摘され、ショックを覚える上司の例などが典型ですが、今日、上司による懲罰的対応により、部下がうつ病等を発症する例が増えており、上司が部下に対して「1人の人間」として接する必要性は急激に高まっているのです。
一般にミスを犯した部下に対する注意などは、それが真に業務改善等を目的とする場合には、社会通念に反しないかぎり一定程度は許されますが(もちろん、業務改善等とは無関係な私情に基づく場合には、業務上必要性を欠くものとして違法と評価されることになろう)、管理監督する立場にある者には、権限行使に際して部下の人格権侵害をもたらすことのないように注意する義務があるのです。そしてその注意義務の程度・範囲は、部下の犯したミスの程度も考慮に入れつつ、注意や叱責の度合いが社会通念に照らして許容されるものであるか否かの観点から判断されることになり、たとえば、ミスを犯した部下に対して、暴行を加えたり、(私的に)罰金を徴収するといった行為が違法とされることは明白であり、また、きわめてささいなミスに対して、例えば皆のいる前で大声で怒鳴る等必要以上に強く叱責することも、社会通念に反して人格権侵害とされることになるのです。
いじめ・パワハラに対する対処法
いじめの被害にあったら、日時、場所、どのような被害にあったか、相手に伝えたこと、近くに誰がいたかなど、具体的な状況をできるだけ詳細にメモし、そのうえで自分がどのように感じているかを説明し、相手に行為をやめるよう要求し、口頭で申し入れても効果がない場合は、文書で行い、いじめが行われていたこと、やめるように要求したことの証拠とすることも考えられるでしょう。
いやがらせの1つとして「仕事を与えられない」場合は、常に業務を行える状態を整え、指示の内容を確認するなど働く意欲があることを対外的に示す必要があるでしょう。いやがらせとして「仕事の指示を変更する」といったこともあるので、後で「言った」「言わない」ということにならないために、録音やメモをとっておくとよいでしょう。悪口や暴言などについては、録音しておき、そのうえで労働組合や弁護士または弁護士会の人権救済部門に相談するとよいでしょう。